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ピアノ初見演奏、新曲視奏とは?

ピアノを練習、勉強されている方々にとって、

初めての曲に向き合い、音符を読み、

ピアノでさらっていて、曲に聞こえる様になるまでにかかる時間は、

一体どれ程の練習時間を費やすのでしょうか?

 

特に日本でしかピアノを勉強した事がない方や、

指導者は、この譜読みに費やす時間、瞬時に楽譜の音符を

ピアノの音に変換し演奏する読譜力、初見演奏の力がついていない方が多い様に思います。

私自身が長年、ピアノ指導してきて、

ヨーロッパと、日本のピアノ教育の違いを考えたときに沢山の違いを感じますが、

その中で、日本のピアノ学習者の方に一番欠けているのが、

この初見演奏能力、初見力です。

これは、日本のピアノ教育における、

従来からある主流の教材やレッスン方法に原因がある事は、

海外のレッスン方式と比較すれば、感の良いピアノ指導者や、

ピアノ学習者の方なら直ぐにお分かり頂ける事と思います。

私のレッスンでは、

小さなお子さんから、シニアのアマチュアの初心者の方や、

現役の音大生、ピアノ講師の方々にも、

それぞれの方のレベルに合わせた初見演奏(新曲視奏)を毎回、必ずレッスンの中に取り入れています。

 

日本のピアノ教育で、初見演奏を取り入れているカリキュラムで、

有名なのは、ヤマハ音楽教室が取り入れているヤマハピアノグレード試験に、

初見演奏があります。

これは、試験としては、各レベルに合わせて、初見演奏試験を行っており、

とても素晴らしいのですが、

ヨーロッパの初見演奏の試験のシステム分類に比べると、

少しレベル設定や、難易度の幅にムラがある事、

また、あくまで試験問題であり、

初見力をつける為のカリキュラムというよりは、

試験対策の色合いが強く、

本当の意味での初見力をつけるには、

ヤマハが出版している初見演奏の教材だけで勉強するのは、

成長を考えると不十分です。(ただし、初見演奏を通常のレッスンに取り入れていないピアノ教室や、メソッドに比べれば遥かに素晴らしいと思いますし、元々、初見演奏の力が多少ある方ならこれでもある程度は初見力がつきます。)

 

そもそも、何故、ヨーロッパの初見演奏教育と、日本のピアノ教育では、

落差が大きいのかを考えた時に、原因を考えていけば、

自ずと初見演奏が育つカリキュラムが見えて来ます。

 

まず、第一に、欧米では、ピアノを始めたばかりの初心者から初見演奏トレーニングが出来る教材が豊富に出版されています。

これは、欧米の多くの主要な教本、メソッドが、ピアノを学ぶ時に、テクニック、奏法と

読譜力、初見演奏能力を同時に学ぶ事を大切に考えているのです。

一方、日本で主流の教本、メソッドの多くが、初見演奏を省いていたり、

ある程度のレベルにならないと、初見演奏が出てこないのです。

この差は大きく、初心者、アマチュアの鍵盤から目線を離し、楽譜を見ながら手元を見ずに演奏するブラインドタッチの習得にも深く遅れを取ります。

 

また、私のレッスンには、音楽大学の現役学生や大手音楽教室のピアノ講師が多くならいに来ますが、そのほとんどの方が、音楽大学においても、初見演奏の個人レッスンを定期的に受けていないのです。

日本の音楽大学では、いまだにソルフェージュのグループクラスの一つとして、

初見演奏がカリキュラムに取り入れられていますが、

あくまでグループレッスンでのみの大学が多く、これが、日本の初見演奏のレベルの低い1番の原因だと思います。

欧米の意識の高い音楽院や音楽大学では、

初見演奏のレッスンは、週に一回以上(多いと週に2回)のペースで、

個人レッスンで、初見演奏専門の担当教授が付き、生徒、学生の個人個人の実力に合わせて、

考えられた個別のカリキュラムで、初見演奏の力を成長させています。

私自身、初見演奏は、初見演奏に特化した個人レッスンでのみ、飛躍的に成長すると、

長年のピアノ教師生活で実感しており、

多くの初見演奏に苦手意識や劣等感すらある音大生や、ピアノ講師を、

初見演奏が得意なピアニストに育てて来ました。

これは、アマチュアの生徒さんにも、同じ事が言えます。

というよりも、アマチュアの方こそ、初見演奏に力を入れるべきだと考えています。

初見演奏の力が付くと、譜読みにかかる時間、負担が飛躍的に減り、

音楽的にピアノ演奏を楽しめる近道になります。

1日の多くの時間をピアノ練習に費やせる音大生やピアノ講師以上に、

忙しい中、限られた時間でしかピアノが練習出来ないアマチュアの方こそ、

初見演奏の力をつけて、効率よくピアノ演奏を楽しめる力が必要だと私は日々のレッスンで痛感しています。

 

初見演奏のレッスンの利点の一つに、事前の練習や、自宅でのピアノを弾く時間を割く必要がない事が挙げられます。

初見演奏レッスンは、あくまで、レッスン室に来た時にのみ、

こちらが、生徒さんのレベルに合わせたカリキュラムを用意して、

時間の限り、一曲でも多くの課題を初見で弾いていきます。

教師はその時の、生徒さんの楽譜に対する読譜力や、

思考を観察して、より合ったレベルの課題を与えていき、

確実に初見演奏能力が上がる課題の設定をします。

初見演奏レッスンで、弾いた曲は、自宅で復習、練習する必要もなく、

また、次のレッスンには、新たな課題をレッスン時間の時のみ、取り組んで頂きます。

教師が生徒さん、一人一人に合った課題を出す事が重要で、

その結果、生徒さんの初見演奏能力は、飛躍的に向上し、

初見演奏に対する考え、意識が変わっていき、また、作品の構成力や和声感を瞬時に掴む事も向上していきます。

 

図書館で読みたい本を見つけたら、直ぐに本の世界に入り込める様な感覚で、

楽譜を読んで直ぐに、音楽の世界に入り込める力をつける、それが本当の初見演奏能力です。

 

ピアノをすでに何年も勉強されている皆さんの中には、

以前に長い時間をかけて、一生懸命練習した曲を久々に弾いてみようとした時に、

まったく弾けなくなっており、譜読みも怪しく、長い時間をかけて練習したのに、

その時間の成果や大事なレパートリーが無くなってしまったような喪失感を感じ、

悲しい気持ちになった事がありますでしょうか?

これは、多くの日本のピアノ愛好家が、経験したことのある事例です。

初見演奏能力があれば、

10年以上前に弾いて以来、弾く機会がなかった曲でも、

楽譜を開いて、すぐに自分のレパートリーとして音楽的な演奏を楽しむ事が出来ます。

 

日本では、初見演奏という言葉を使う事が多いですが、

海外ではsight reading  新曲視奏 という言葉の方が正しいかと思います。

この新曲試奏、言葉の意味としては、

初めて見る楽譜、曲を視るだけで頭の中で演奏出来る事を指します。

これが出来る様になると、

通勤電車や、ベンチで座っている時に楽譜を読む時間、

カフェなどで、文庫本を読む様に楽譜を読む時間が、

あたかもピアノに向かって、実際に練習したのと、

ほとんど同じ効果、成果を得られる様になります。

また、新曲視奏に慣れていくと、

暗譜も比較的早く仕上がる様になっていきます。

 

日本は、初見演奏に関しては、欧米に比べると、

遅れている様に思いますが、

個人レッスンでの初見演奏を受講する事で、

譜読みのストレスや、

譜読み間違い、リズム間違いによる、

間違った練習や、遠回りな無駄な練習から解放されて、

純粋にピアノ演奏を深く楽しむ事ができるようになります。

 

当ピアノ教室では、

他のピアノ教室に通っている方や、ピアノ講師の方も、

ピアノの初見演奏のみのレッスン受講される方が沢山いらっしゃるのは、

こういう所に理由があるように思います。

 

                                 新宿ピアノスクール 藤澤和志

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